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【旅行記】午前0時、はまなすを待つ―JR北海道・函館駅

2017/08/12発行『発車案内紀行』より

 「はまなす」とは、青森駅~札幌駅間を走っていた夜行急行列車である。JR最後の定期急行列車(急行料金を必要とする列車)、客車を使用した最後の定期夜行列車、青函トンネルを通過する最後の定期夜行列車*1と、「最後」が多く付く列車だった。北海道新幹線開業に伴い、2016年3月をもって廃止となった。
 2015年秋、私は函館に訪れていた。市内の観光や、江差線(現・道南いさりび鉄道)の列車に乗るなどして時間を潰してから夜の函館駅に向かった。
 22時半頃、待合所に数名の男女がいた。小型の時刻表を持った年配の男性、駅スタンプ帳を持った女性、カメラを持った親子……いかにも「鉄分」の多い雰囲気が伝わってくる老若男女が揃っていた。皆、「はまなす」を待っている人達だ。
 函館駅に「はまなす」が到着する時刻は、札幌行きが0時44分、青森行きが2時52分。私は青森行きの「はまなす」に乗車するつもりだった。乗車区間は、函館駅から青森駅と短いが、その代わりに、函館駅にやって来る札幌行きと青森行きの2つを見ることができる。23時17分発の普通列車木古内行きが発車すると、発車標から行き先と発車時刻の表示が消えた。0時になってしばらくすると、発車標に文字が表示された。青森行きと札幌行きの「はまなす」の案内である。
 発車標の「急行はまなす」の下部にスクロール表示で、改札についての案内が流れてきた。青森行きは「3時56分発青森行き急行はまなす号の改札時刻は、2時50分(函館到着時刻2時52分)を予定しています。」、札幌行きは「1時23分札幌行き急行はまなす号の改札時刻は、0時40分ころを予定しています。」と表示された。
 先にやって来る札幌行き「はまなす」を見に、ホームへ向かった。ホームには「はまなす」を撮影するためにやって来た男性が3人いた。深夜の函館駅の見回りに来た警察の方もいた。その方達と、ホームの片隅でちょっとした談笑を楽しんだ。撮影に訪れた男性達は各自バラバラで、関東からやって来たという。警察の方は「ここに立っていると機関車がよく見えるよ」と、「はまなす」を見に来た私に優しく教えてくれた。
 0時40分頃、札幌行き「はまなす」がやって来た。客車を牽引する機関車が段々と近づく様子を眺めていた。車両の先頭に掲げられた「はまなす」のヘッドマークが見えた。停車すると、客車の中からカメラを持った人達が飛び出してきた。函館駅には40分ほど停車するから、絶好の撮影時間である。


 私は、しばらく眺めた後、札幌に向けて発車するところを見届けた。青森行き「はまなす」を待った。発車標の案内どおり、2時45分に青森行き「はまなす」がやって来た。いったん乗って自分の座席位置を確認してからホームに出て、列車を撮影していた。ヘッドマークを掲げた青色のDD51形機関車がとても格好良く見えた。一方、客車は所々、青色の塗装がめくれていた。
 乗車後に眠るつもりだったが、いざ乗ってみるとなかなか眠れない。車内は明るく、走行中の揺れもある。眠らずに青森に向かうことにした。函館駅からスイッチバックし、座席の向きとは逆に走行するため、違和感があった。特に青函トンネルを走行中は、トンネル内に設置されている照明が進行方向とは逆に流れて行くため、何やらフィクションに登場するような乗り物に乗っている感覚だった。
 6時19分、定刻通りに青森駅に到着した。外は明るくなってきたばかりだ。乗客を降ろした「はまなす」が走り去って行く姿を眺めながら、別れを告げた。

 それから「はまなす」が廃止され、北海道新幹線が開業してから1年が経つ頃、再び函館駅に訪れる機会があった。発車標は3色LED式のまま変わらないが、かつての江差線第三セクター道南いさりび鉄道に移管された。在来線では青森駅まで行くことはなくなり、道内の木古内駅までとなった。函館本線を見ると、新幹線駅である新函館北斗駅(旧・渡島大野駅)まで電化され、同駅と函館駅を結ぶ列車「はこだてライナー」が走るようになった。
 青函トンネルができてから28年、ようやく北海道に新幹線がやってきた。何かが終わり、新しい何かが始まることを鉄道で感じるのであった。

〈了〉

*1:同じく青函トンネルを通過する「カシオペア」は臨時列車扱い。